【特別寄稿】柳沼昭徳「混淆(こんこう)を知る」 | 伝統芸能アーカイブ&リサーチオフィス - TARO
はじめに およそ5年前に出会ってから、ずっと神楽を追いかけている者です。 5年。私の出会った神楽のひとつ、岩手県早池峰(はやちね)の大償(おおつぐない)神楽の最古の伝授書が1488年のものといいますから、最低でも500年以上の歴史のある民俗芸能ということになります。そこから見れば5年など、一目惚れしちゃった、出会った程度にすぎません。はじめから分かっていたことですが、知れば知るほど奥が深い、いや、深いどころか、どんどんと混迷を極めていっています。 このテキストは、普段は現代演劇を手がけてきた私が、活動から15年も経とうとしたある日、突如、神楽なる民俗芸能と出会い、感銘を受けて以降の、ぐんぐんとのめり込んでいったその経緯と、同時に神楽と出会ってから、徒手空拳で続けている、自身の作品と神楽との「混淆」の試みの記録です。 先に述べたように、まだ一目惚れをして間もなく。今試していることが、ベストなのかどうかも判断しきれない道半ばゆえ、とりとめもまとまりも無いことも多くなってしまうかもしれませんが、あくまで2019年現在の里程標としてここに残しておきたいと思います。 神楽を一口には語ることはとても難しい。それは、神楽という伝統芸能が日本国内の随所で多く成立し、地域によって傾向の類似こそあれ、舞いや囃子、上演形態、どれひとつとっても同じものが存在しないという、小劇場演劇とも似た、研究者泣かせの極めて多種多様な芸能だからです。 2015年に出会って以降、今に至るまで、私の関わった演劇作品のほぼすべての作品において、神楽は直接的、または間接的に影響を与えてきました。 2015年 『新・内山』(主催:京都芸術センター) 2016〜17年 『凪の砦』(主催:烏丸ストロークロック) 2017〜18年 『まほろばの景』(主催:烏丸ストロークロック) 2018〜19年 『祝(しゅく)・祝日(しゅくじつ)』(主催:烏丸ストロークロック) 2016〜19年 『新平和』(主催:広島アクターズラボ) 「〜」という表記について。私は最終的な長編作品に至るまで、試作を兼ねて短編作品を創作して、その上演を経ながら改良していく、という創作形態をとっています。したがって、一つの作品としてではなく、ある期間に取り組んだ長短の作品群からなるプロジェクトとして捉えるとわかりやすいかと思います。
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