『但東さいさい』上演レポート@一宮神社(9月21日)
2022年9月21日(火)、台風一過を経てなんとか前日の設営も終わって、いよいよ高橋地区久畑の一宮神社での本番当日です。bozzoさんの写真とともに作品の紹介をします!
舞台の両脇を飾る古い着物は、地域の方からもう着られないものとしてお譲りいただきました。支柱となっている竹も各地域の方のご協力いただいて、毎公演会場の近くで切り出してきました。
後の写真でも出てきます今回の神楽幕は、今回も舞台美術アドバイザーとして入っていただきました杉山至さんファシリテートのもと、出演のこどもたちと一緒に物語に出てくる場面や担当の風景を描きました。
開演の15分前。『祝・祝日』でもお馴染みの式舞・鶏舞で場を清めます。
大人お囃子隊。今回、初投入された電子太鼓TAIKO-1。
鶏舞が終わり、物語神楽『但東さいさい』の始まりです。但馬の国で暮らす政吉は、流行り病で家族を失い、江戸の親戚の家で成長します。大きくなった政吉は、家族の供養をしようとその遺髪を携えて江戸からはるばる故郷の但馬の国を目指して旅をします。但東は豊岡市の東端、京都府との境に位置し、旧村名に由来する高橋・合橋・資母の3つの生活圏に分かれています。政吉は福知山からの峠を越えて但東に入り、3つの地域をお墓を探して巡ります。
第1幕『高橋のなんじゃもんじゃの木』
※なんじゃもんじゃの木のある佐々木があるのは正確には合橋です
〽︎政吉の旅のうた①
西へ箱根の白妙や 晴るる富士山雪仏
芽吹くも鈴鹿の厳しさよ 京の都の花の色
北へ丹波の炎暑道 空蝉、玉虫、福知山
青鬼灯の峠道 登尾越えれば涼風や
但馬の国にたどり着いた政吉は、かつて住んでいた村にあった大きな杉の木を目印に家族のお墓を探します。村のこどもたちの案内で、大きな「なんじゃもんじゃの木」を探し当てます。しかし、それは政吉が探していた杉の木ではありませんでした。がっかりした政吉と子どもたちの前に、にぎやかな神様・三番叟が現れて森の生き物たちと一緒になって騒ぎ始め、政吉は不思議とにぎやかで晴れやかな時間を過ごします。
第2幕『西谷の清流の滝』
〽︎政吉の旅のうた②
夕やけこやけの大河内 久畑の関所で通せんぼ
なんじゃもんじゃの縁結び どこ行く大手のおていさん
子どもたちと別れ、再び政吉が旅を続けていると、長い日照りで不作にあえぐ村人たちと出会います。気の毒に思った政吉は、村の長老たちと一緒に雨乞いに参加します。龍神が現れるという滝の前に行き、みんなで一生懸命祈っていると、みるみるうちにあたりは暗くなり雷鳴が轟き、大きな大きな龍が現れました。うねり暴れる龍神を前に政吉たちは呆気に取られます。そしてとうとう雨が降り始めたのです。数ヶ月ぶりの雨に喜ぶ村人たちは政吉に礼を言いました。長老は政吉の旅の事情を聞くと、政吉の探す杉は、峠を超えた先の村にあることを教えてくれました。
〽︎とうとき神もうらめしや
空晴れて 但馬の景色 よけれども たなびく雲なく うらめしや
干上がりて 白き田のひび 痛々し 東里のかげろう うらめしや
天地の とうとき神の みこころの しわざと思えど うらめしや
〽︎龍神さまにいのる
世の中を 安からしめんと 千早ぶる 竜神様よ やらいましけれ
第3幕『説法杉と山の神』
ついに、家族と暮らした場所の手がかりを見つけた政吉は、意気揚々と夜の峠道を登っていきました。そこに現れた峠のきつねたちは夜道を歩く政吉のいく先を尋ねます。いたずら好きのきつね達は、政吉が会いたいという父親に化けてやろうと姿を消すと、代わりに現れたのは真っ赤な顔の山の神様でした。
〽︎政吉の旅のうた③
江戸より数えて百数里 ふるさと訪ねて百数里
導きたまへと念ずるは まだ見ぬ菩提の遠つ祖
出合を上りて三原村 唐川、西野々、太田村
南明峠にゃ化け狐 焼いて食おうか煮て食おか
〽︎神のいきおい
あれを見よ 山から花は 舞い降る 千代振る神の 此処は舞いどこ
この家から 如何なる神の 建てしやら 四方の隅より 黄金花咲く
御神楽は 剣か剣に なお勝る 岩戸も開けし 神のいきおい!
山の神は政吉の前で舞い始めます、その美しい舞を眺めていた政吉はよくよく見ると、山の神が死んだ政吉の父親であることに気づきます。
「おとう!」
政吉の呼びかけに、山の神は答ともつかない返事をし、さらに激しく舞い続け、そしてきつねたちとともに霧のように消えていってしまうのでした。
山の神が消えたその場所には政吉が探していた杉の木が高く高くそびえていました。そこは政吉が生まれ育った村でした。家族と暮らした場所、山の神として現れた父親、政吉はここが自分の故郷であることを強く強く感じます。
そうして、政吉はここで新しい家族を作って暮らしたのでした。
おわり。
語り、お囃子も幕ごとに交代しながら担いました!
受付横には出店やゲームコーナーもあり!開演前や幕間の時間も楽しんでもらいました。
一宮神社での上演は今回は唯一の夜公演だったので、闇夜に明かりが灯る舞台が美しかったですね。
写真:bozzo (一番最後の全景写真を除く)
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