城崎国際アートセンター滞在レポート(2019/12/2~15)
©igaki photo studio 写真提供:城崎国際アートセンター
共に起き、共に稽古し、共に食し、共に風呂に浸かり、共に酒を呑み、共に寝る。たまには共に街を歩き、山を歩き、『まほろばの景2020』の創作の始まりは、そうした生活を共にし互いを知る、城崎国際アートセンターでの滞在制作から始まりました。
城崎国際アートセンターは兵庫県豊岡市の城崎温泉のはずれにある、アーティストインレジデンスのための施設。毎年国内外様々なアーティストがここを訪れ滞在し作品を創っています。公演会場としても使われる広い稽古場、みんなで食事を作れる広いキッチンと十分な宿泊施設。なんとも有難い環境に、到着早々テンションのあがる面々。
城崎での稽古はとにかく、生活を共にして良きも悪きも互いを知ること、そして神楽の稽古を通して共通の身体を作ることに時間を費やしました。1月末本番の公演が迫っている中、遠回りのようにも思えますが、そうしたこの5人の集団性を高めていくことが『まほろばの景2020』の最大の見せどころ。
某日 雨たまに霰
アートセンターから日本海側へ向かい、鋳物師戻峠(いもじもどしとうげ)という変わった名前の峠を越えて、海水浴場のある竹野まで歩きました。距離にして約10km弱。何百年も変わらない地形と冬の日本海側特有の雨が降ったりやんだりする天気を直に感じながらひたすら歩く日。海に着く頃にはすっかり凍えてしまった身体を温めるべく引き寄せられるように入った休憩どころ、その名も「なごみてぇ」。地元のお父さんお母さんたちが空き家を改装して始めたお店だそう。温かいわかめうどんとかやくご飯をいただきながら、鋳物師戻峠の名前の由来を伺いました。竹野はかつてタタラ場のあった町。気になる方はぜひこちらをご覧ください(https://www.tajima.or.jp/furusato/141716/)。
某日 曇り時々雨
城崎滞在中は雨の降らない日はほとんどありませんでした。日本海側の冬はこういうものかと身をもって知ることになりました。たまに覗く日差しに喜ぶメンバーたち、いつもより5割増しで太陽が神々しく見えたものです。
今回の成果発表はチェロの中川氏が不在のため、これまでの『祝・祝日』で中川氏が担っていたお囃子の役割を俳優が交代で担います。一定のリズムを刻めば良いわけではなく、舞の決め所、舞手の動きとお互いに呼応する必要があり、集団性の向上という意味でもとても良い稽古になりました。
某日 曇り
城崎温泉街の守護寺、温泉寺の住職にお話を伺いに行きました。温泉街が壊滅状態となった北但大震災(大正14年)後、現在の街並みがどうやって生まれ維持されてきたのか、それを踏まえた上での温泉寺の観音様と温泉自体に対する住民の信仰のお話、そして、僧侶はそうした信仰の仲介者であるという言葉が印象的でした。
©igaki photo studio 写真提供:城崎国際アートセンター
成果発表当日 やはり曇り時々雨
前日から舞台美術家の杉山至さんが稽古を観に来ました。颯爽と成果発表の場を整えてくださり、予想もしていなかった金屏風も設置され、あっという間にお祭りの空間が出来上がりました。振る舞いの酒やお菓子、おにぎりに豚汁に甘酒の用意も整い、あとはお客さんがくるのを待つばかり。
本番は、地元の方や豊岡からの方、アートセンターでのダンスワークショップに来ていた子どもたちも来てくれて、非常ににぎやかな会場になりました。本番は俳優たちの乾杯の音頭から始まり、俳優もお客さんも上演中含めて飲み食い自由、全部で四番舞った神楽も多いに盛り上がり、すべて終わった後に、太鼓をたたいてみたい子供たちのお囃子にまさに囃し立てられて、再び舞を披露するなど雑然とした心地よさのある空間が自然と生まれていきました。
©igaki photo studio 写真提供:城崎国際アートセンター
この度の成果発表では、2018年に2回上演した『祝・祝日』の城崎バージョンでの上演でした。これは、烏丸ストロークロックが祭や神楽の研究のために始めた試みで、全編通して俳優が神楽を舞う作品です。我々の日々の営みの中で渦巻く祈りや信仰をどうやって昇華させていくのかが大きなテーマでありますが、今回の城崎での上演は、それを少し実現できたのではと感じています。
この成果が本編『まほろばの景2020』にどうつながっていくのかぜひご期待ください。
今回このような場所を用意してくださり、企画の実現にご協力くださった城崎国際アートセンターとご来場のお客様に改めて感謝いたします。
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