はじめに
烏丸ストロークロックが旗揚げして間もない1999年、第3作目として『クヨウミチ』は上演されました。
現代人の抱える孤独感・空虚感などのメンタリティを題材に創作活動続けてきた烏丸ストロークロックの現とも言うべき本作は、初期の作品の特徴である、テンポある日常会話、リアルな心情描写といった手法を用いながら、新たな方法論を見いだそうとする意気が大いに感じられる、烏丸ストロークロックを語る上で決して欠かせない作品です。

作品に寄せて
ジャンプすること。
人が人を愛することはジャンプして落下し続け、たちまちのうちに世界の足場を失うことなのだろう。柳沼昭徳さんの「クヨウミチ」には、そんな痛切な愛の行為が描かれている。
それならば誰のために自らの居場所は与えられるのだろう。それは、まだ見ぬ遠き他者のために相違ない。きっと、メグミはユキのために幽霊団地の屋上から飛んだんだと私は思う。
何という素晴らしき歓待!
この作品は二十世紀の終わりの年に書かれた。あれから五年、この国では自国民の供養ばかりを美しく喧伝し続けている。しかし、誰が誰のために何をクヨウするのか。その問いへの応答の手がかりがこの作品にはあるように思えてならない。

あらすじ
つばきが丘ニュータウン。1995年。
コウスケという男がいました。
宿命的に孤独ということ以外、
他に特筆すべきことは何もありませんでした。
世界の全てに誠実になろうとして、投げ出したのはずっと昔のこと。
彼は心に誓います。せめて身近にいるごくわずかな人々にだけは優しくなろうと。
そんな彼はやがて一人の女性を愛しました。
名前はユキといいました。
町はずれの2Kのアパート。
それまで一人で過ごしていた季節が色あせて見えるほど、
確実な日々を二人は身を寄せ合って過ごしました。
やがてユキに子供が宿りました。
まるで裏山の木々達二人を祝福しているかのような、そんな出来過ぎた春の日のことでした。
